痛み・不快の原因

 
■痛む部分が移動する?(腰痛)
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  子どもの頃、注射の痛みをももをつねってごまかしたりしたことがありま
 すよね?

 あれでもおわかりのように、人間は、2ヵ所同時に痛みを感じることはでき
 ないのです。

 実は、腰痛の場合も、痛みの原因が1ヵ所だけであることは、ほとんどあり
 ません。

 とりあえず1番痛いところしか感知できないだけで、実際には複数ヵ所ズレ
 ているのが、ごく普通のことなのです。


 しかし、整形外科での一般的な診断では、痛みの原因を1ヵ所しか特定しま
 せん。

 そのため、ヘルニアの手術をした後に、痛みが残ることがよくあります。

 これは、手術して取り除いた部分が、また痛みを出しているわけではなく、
 元々、複数ヵ所あった痛みの原因のうち、1番手がなくなったので、2番手
 だったものを感知できるようになっただけなのかも知れないのです。

 
  また、上記とは違うパターンで、何かの拍子に、1番痛い場所と2番目に
 痛い場所が、逆転する例もよくあります。

 この時問題になるのは、整形外科医が、痛む部分が移動するのはよくあるこ
 とだ、と把握してない場合です。

 検査の度に痛む場所が移動して、検査上では脊椎に明らかな異常が認められ
 ないとなると、整形外科医は、原因はストレスなどの心因性だと判断して、
 心療内科に患者を回します。

 けれども、痛む場所が移動していようがいまいが、物理的にズレてしまって
 いることには変わりはありませんので、精神面のケアをしてもらっても腰痛
 は治りません。

 こうなると、自然に骨の位置が元に戻るのを待つしかないわけですが、患者
 さんに余計な時間的、経済的、また精神的な負担を強いることになります。


  私の診たところ、腰痛の方の1割くらいは、痛む場所が移動するパターン
 です。

 痛みが移動した先でも、その部分は間違いなく骨がズレていますので、簡単
 に確認できます。

 ズレている骨を元の位置に戻すだけですから、私にとっては、一般的な腰痛
 患者さんと何も変わりがありません。

 もちろん、痛みが移動するパターンの方たちに、精神的なケアが必要だと感
 じたことは一度もありません。


 つまり、検査の度に痛む場所が違うからといって、それは決して心因性では
 ないのです。

 痛みが移動することの原因はわかりませんが、あくまでも、整形外科的な骨
 の問題であることは間違いありません。

                      (花山形態矯正 花山 水清)

 ■くるぶしあたりがピリピリ痛む
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  この症例はあまり知られていませんが、くるぶしのあたりがピリピリ痛む
 という方がいらっしゃいます。

 この症状の方の多くは腰痛持ちで、ほとんどの場合、このピリピリ感は右足
 に出るのが特徴です。

 何らかの原因で、胸椎12番が左にズレているため、その真下に位置する腰
 椎1番が右にズレこんだ形となっているのが原因です。

 通常なら、左にズレた胸椎12番が神経を圧迫して痛みやしびれの症状を出
 しますが、この場合は、その下に位置する腰椎1番が右にズレることで、右
 足に向かう神経を圧迫して症状を出しているのです。

 椎骨がズレて神経を圧迫しているのですから、ズレを矯正すれば、くるぶし
 のピリピリとした痛みは即座に消失します。

 しかし、このタイプのズレは「ねじれ現象」によるものですので、再発する
 場合が多く、完治するのにも時間がかかるのも特徴です。


  また、この症状の不可解なのは、右にズレた腰椎1番が、直接圧迫してい
 る「L1神経」と、くるぶしのところの「腓骨神経」との関わりが、解剖学
 的には直接結びついていない点です。

 そのためでしょうか、整形外科でくるぶしのピリピリ感を訴えても、足首の
 レントゲンを撮るだけで、それ以上の原因を探ろうとはしません。

 そうなると、当然ながら、整形外科ではこの症状の正確な診断は得られない
 ことになりますので、根本的な治療は望めません。

 整形外科で治らないからといっても、原因となっているのは足首ではありま
 せんので、ピリピリ感のある部分をマッサージしてもらっても症状は取れま
 せんし、逆に痛みが増すこともあります。

 しかも、くるぶしの辺りは血栓ができやすい場所です。

 そこに刺激を与えること自体に危険が伴いますので、強くもみこむようなこ
 とはしないほうが良いでしょう。

 (血栓については、また別の機会に説明します)

 
  最近、整形外科では腰痛の方にコルセットの着用を勧めることが多いよう
 ですが、コルセットの上の端が腰椎1番に当たって、そのせいでズレが助長
 している場合があります。

 くるぶしのピリピリ感がいつまでも続くようなら、コルセットのせいかも知
 れませんので、一旦コルセットをはずして、様子をみてください。

 コルセットは、骨折した時のギプスみたいなものです。

 安静にするためのものであって、腰痛の根本的な治療にはなりませんので、
 腰痛のひどい症状が収まってきたら、早めにはずしたほうが良いようです。

■曲がった足首
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  街中でハイヒールを履いた女性を見ると、足首の捻挫(ねんざ)が心配に
 なります。

 結構な割合で、足首が曲がっている方がいますが、これは、以前、足首を捻
 挫したのをそのままにしていて、ズレた位置で固まっているせいなのです。


 ほとんどの方は、過去に大なり小なり足首の捻挫を経験しているでしょう。

 ひどい場合だと足首の脱臼にまでなってしまいますが、この捻挫と脱臼の違
 いは、一般の方はあまりご存知ないかも知れませんね。

 よく起きる捻挫は、足首を強い力でひねってしまったことで、骨と骨とを結
 合している靭帯と呼ばれる組織が傷ついたり、断裂したりしても、関節自体
 にはズレが生じていない症状のことです。

 それに対して、足首の靭帯が断裂して、関節までズレてしまっているのが脱
 臼です。

 これがいわゆる整形外科的な説明で、関節のズレがあるかないかが、捻挫と
 脱臼の違いだと定義しているわけです。


  捻挫のほとんどは、足先を内側に強く曲げてしまったことで生じ、くるぶ
 しの下の部分(外側)が腫れて痛みます。

 それだけなら、たいていは数日で自然に痛みは収まります。

 しかし、整形外科的には関節はズレていないはずなのに、実際には、痛みが
 収まっても、足首が曲がったままの方が大勢いらっしゃいます。

 先ほど挙げた整形外科的な説明では、脱臼と捻挫の違いは、足首の関節のズ
 レの有無だったはずですが、実は、捻挫にも関節のズレが起こっているので
 す。

 私が診たところでは、そのズレこそが捻挫の痛みや腫れの原因となっている
 ようです。

 その証拠に、靭帯が断裂していない状態なら、関節のズレを矯正すると痛み
 はその場で消失しますし、腫れも短時間で収まります。

 つまり、医学的な脱臼と捻挫の違いの定義は間違っていると言えるのです。

 そのため、整形外科では、靭帯が完全に断裂していない捻挫には、湿布剤を
 処方する程度の処置で済ませてしまいます。

 しかし、湿布を貼ってもズレた関節はそのままですので、足首が曲がったま
 まで固定してしまうことになります。

 これは、自然に元の位置に戻ることはありません。

 確かに、足首が曲がっていても、すぐに日常生活に支障を及ぼすわけではあ
 りませんが、本来あるべき形ではないわけですから、長い年月経つと膝や股
 関節に影響がないとは言いきれないのです。

 
  今後、もし捻挫してしまったら、まずは整形外科で靭帯の断裂の有無を調
 べてもらって、靭帯が断裂してなければ、後は、整骨院などで足首の関節の
 ズレたところを矯正してもらうのが良いでしょう。

 足首の矯正は簡単ですし、治療家の腕が確かなら、矯正自体には痛みもない
 はずです。

 もちろん、整骨院などの治療家の選定は、自己責任でお願いしますね。

■アキレス腱の痛み
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  アキレス腱が痛くなって、アキレス腱の根元の部分が腫れ上がり、歩行ま
 で困難になってしまう方がいます。

 そのような症状で整形外科に行くと、「アキレス腱滑液包炎」や「アキレス
 腱周囲炎」と診断されます。

 整形外科では、原因は、靴などの刺激や足の筋肉の使いすぎで、踵の骨とア
 キレス腱の間にある滑液包に炎症が起こったためだとされています。

 そして、症状が軽いようなら湿布剤や鎮痛剤が処方されますが、ひどい場合
 には手術になるようです。

 
  しかし、私が診てみると、この症状が出ている方は、踵の部分にある距骨
 (きょこつ)と踵骨(しょうこつ)がズレています。

 症状の原因がズレである証拠に、このズレた骨を元の位置に戻してやると、
 すぐに痛みや腫れは消失してしまいます。

 ですから、この症状は、距骨と踵骨の単なる捻挫によるものではないかと私
 は見ているのです。

 通常の足首の捻挫の場合は、足首が外側に倒れ込んで、くるぶしの下の部分
 に痛みや腫れが出ますが、今回のようにアキレス腱が痛む場合は、つま先を
 丸めて、前につまずくような形で足首を捻挫した時に起こるようです。

 この症状がバレエダンサーの方に多く見られるのも、そういうポーズをとる
 機会が一般の方よりも圧倒的に多いせいでしょう。

 一般の方の場合、長時間正座して足の感覚が麻痺したまま立ち上がろうとし
 た時や、はしごの昇り降りの時に、このタイプの捻挫を起こしやすいので、
 ご注意ください。 
 
 
  現在のところ、残念ながら整形外科にはこの症状に対する根本的な治療法
 はありません。

 しかし、原因が痛風や他の病気である可能性も考えられますので、一旦はき
 ちんと受診して、医師に診断してもらう必要があります。

 その上で、原因が内科的な問題でもなく、腱の断裂や骨折でもないとわかれ
 ば、後は、患部を刺激しないようにして、できるだけ安静にしてください。


 ■片足が短い(脚長差)
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  民間療法だけではなく、整形外科においても、片足が短いと診断される方
 がいます。

 これは、医学的には「脚長差」と呼ばれる状態です。


  元々、人間の体は完璧な左右対照ではありません。

 腕などは、通常よく使うほうが若干長くなっているのが普通なのに、最近で
 は、足の長さの左右差をことさらに問題視する傾向があるようです。

 腰痛や変形性股関節症の方などが、足の長さに左右差があるのが原因である
 と診断されたりします。

 近頃では、靴の中に装具を入れることで短いほうの足に上げ底をして、左右
 の足の長さを揃えるという治療が、整形外科でも流行っています。

 しかし、左右の足の長さを正確に計ろうと思うなら、股関節、膝関節、足首
 の関節のそれぞれの変形やズレも考慮しなければなりません。

 仮に、画像上で足の長さを比較するにしても、写す角度の違いで1〜2cm
 ぐらいの誤差は簡単に出てしまうはずですから、腰痛などの原因だとする根
 拠にはなりえません。


  実際のところ、片足が短いと診断された方の体を診てみると、ほぼ間違い
 なく、腸骨(骨盤)がねじれています。

 また、ほとんどの場合、腸骨の左側が上体の方向に上がった形にゆがんでい
 ます。

 そうすると、必然的に、腸骨につながっている足の付け根の位置も左が上に
 なりますので、足自体の長さは同じでも、足先を見ると左の足が短くなって
 いるように見えてしまうのです。

 この場合、腸骨のゆがみを矯正すると足の長さも揃いますし、腰痛などの痛
 みもその場で止まります。

 これは、ゆがむ方向が一定で、左が上になっているのが特徴ですので、「ね
 じれ現象」のひとつであると思われます。

 原因が「ねじれ現象」であれば、手技で矯正しなくても、自然に治る場合も
 ありますが、靴底を上げる装具を使っていると、結果として、腸骨をゆがん
 だ位置で固定し続けることになりますから、絶対に自然治癒することはあり
 ません。

 それだけでなく、装具によって作られたひずみによる負担が、今度は腰椎に
 かかってきますので、もっとひどい腰痛になることもあります。

 以上のことから考えて、腰痛や変形性股関節症などの方には、装具の使用は
 お勧めできません。


  また、民間療法などでは、単純に足の左右差をなくせばいいのだとして、
 短いほうの足を強引に引っ張ったりする施術者がいます。

 これは、股関節などの靭帯を伸ばして痛めてしまうこともありますので、非
 常に危険ですし、治療のためには全く必要のない施術方法です。

 ひどい場合には、入院が必要となるような股関節脱臼になる可能性もありま
 すので、足を引っ張るような治療は、絶対に受けてはいけません。


  足の長さの違いが腸骨のゆがみによるものなら、等間隔で大股に歩くと腸
 骨の矯正になります。

 腸骨のゆがみには、日頃からよく歩くのが予防になりますので、歩ける人は
 毎日たくさん歩くようにしてください。

 ■口が曲がっている(片噛み)
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  ニュースを見ていると、キャスターの口が曲がっているのが目に付くこと
 があります。

 証明写真などで、正面から撮った写真を見て、自分で気づく方もいらっしゃ
 るようですが、この、口が曲がっているというのは、口角の角度が左右対照
 ではない状態のことです。

 以前、「ガンの前兆」シリーズでもお伝えしたように、形態異常でも口が曲
 がって見えることがあります。

 形態異常の場合は、左の口角が上がるのが特徴で、例外はありませんし、左
 の目が細くなっていますので、口だけが変化するわけではありません。

 しかし、今回お伝えしたいのは、口だけが曲がっている場合で、左右のどち
 らにでも起こる可能性があります。

 これは、顔面神経麻痺などの場合を除けば、何らかの理由で片側の歯だけで
 食べ物を噛んでいるために起こります。

 一般的には、未治療の虫歯が痛くて、虫歯のないほうの歯だけで噛むのが癖
 になっている、いわゆる片噛みが原因となっているようです。


  食べ物を噛むためには、咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋などの咀
 嚼筋という筋肉を使います。

 しかし、片噛みを続けていると、使っていない側の咀嚼筋は弱ってきます。

 この筋力低下のスピードはかなり速いので、あっという間に筋肉がたるん
 で、口角が下がってしまうのです。

 口が曲がっているのは見た目にもよくありませんが、さらにひどい状態にな
 ると、顎関節にまで影響を及ぼしますので、早いうちに対処する必要があり
 ます。


  顔面神経麻痺の疑いがあれば、専門医を受診していただくのが先ですし、
 虫歯があるなら1日も早く治療していただくのが前提ですが、片噛みの癖が
 直せない方には、手っ取り早い訓練法もあります。

 まず、割り箸を用意してください。

 それを、口角が下がってしまった側の歯でガシガシ噛みます。

 これなら、まだ虫歯のある方でも、痛くない歯で噛むようにすれば咀嚼筋を
 鍛えることができます。

 この訓練をすると、数日で筋力が回復して口角もちゃんと上がってきますの

 ■背中に不快なコリがある
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  睡眠不足でもないのに、何となく疲れやすく、気分が重くてスッキリしな
 い時がありますよね。

 具体的には、肩甲骨と背骨の間の部分にだるさや凝っているような不快感が
 あって、それが一日だけではなく、いつまでも続くという方がたくさんおら
 れます。

 毎日だるいとなると心配ですので、病院を受診される方もいますが、この症
 状で病院に行っても、特別な病名がつくわけではありません。

 原因にしても、疲れやストレスでしょうと言われるだけです。

 そう言われてしまうと、つい納得してしまう方も多いはずですが、実はこれ
 は、肩甲骨が外側にズレてしまっているのが原因で起こる、ごくごく一般的
 な症状なのです。

 この肩甲骨という骨は、意外にズレやすいもので、重いカバンを肩にかけた
 り、重いものを片手で持っただけでもズレますし、吊り革へのつかまり方が
 悪くても簡単にズレてしまいます。

 ストレッチの中にも肩甲骨を外側に引っ張るような運動がありますが、あれ
 もズレやすい人には危険です。

 また、マッサージなどの手技で、肩甲骨を外側に向けて押されてもズレます
 ので、くれぐれもご注意ください。


  肩甲骨が外側にズレると、僧坊筋が引っ張られて、なんともいえない不快
 感があります。

 痛いというほどではなく、何となく気が晴れない重苦しい感じなのです。

 この重苦しさのせいで、ストレスが原因だと言われるのかも知れませんね。

 これも、肩甲骨を矯正して、きちんと元の位置に戻してやれば、不快感は
 パッと消失します。

 しかし、これはねじれ現象によるものではありませんので、一旦ズレてしま
 うと、そのままでは肩甲骨が自然に元の位置に戻ることはありません。

 自分で治すなら、両手を背中側で組んで、肩甲骨を中(背骨側)に寄せるよ
 うな運動をするといいでしょう。


 実は、この肩甲骨のズレが五十肩の原因になることもあります。

 肩甲骨を寄せたり、腕や肩をグルグル回すのは、五十肩の改善や予防にもな
 りますから、毎日やるようにしてください。

 今は20代でも五十肩になる時代です。

 若い方もこの矯正体操や運動は日課にしておくといいですよ。

 でお試しください。



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以下9月から公開予定
痛み・不快の原因
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美術形態学の夜明け

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参考文献

講習会参加者やご興味のある方向けに当会が推薦する文献をご紹介します。