現代医学によるガンの治療


出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 腫瘍の診断

 今までの診療の歴史からみて、もっとも重要な診断手段は症状や不定愁訴(疲労、体重減少、原因不明の貧血、あるいは他のがんに付随した症状)である。し ば しば健康診断によって局在性の悪性腫瘍が発見される。 診断方法を次に示す。

* X線撮像
* CTスキャン(CT Scanning)
* MRIスキャン(MRI Scanning)
* 放射性トレーサー(nuclear medicine)を使用したシンチグラフィー
* PET(Positron emission tomography)
* 病理組織検査(Biopsy) - 細針吸引細胞診(fine-needle aspiration), 検査手術(exploratory surgery)
* 血液検査(Blood tests) 診断としては稀であるが、腫瘍が局在化性か転移性かを識別する助けになる。
* 腫瘍マーカー(Tumor markers) 特殊な血液検査によって、ある種の腫瘍の存在を示唆することができる。

診断だけにとどまらず、これらの診断結果(とくにCT像)は手術可能性、例えは腫瘍を全摘出可能か否かの決定にしばしば使用される。 一般的に(Biopsyによる)組織検査は厳密ながんの型判定の基本であると理解されている。組織検査が不可能な場合は、(検査判定なしなので)対症療法 が取りうる手段となる。 時として、原発がんが見つからず、このような場合は"原発巣不明"と呼ばれる。特殊な画像診断(18F-FDG PET)は対症療法での特定の際に役に立つ。

腫瘍の分類
診断の結果は分類され、治療方針に反映される。大別すると組織学的分類と病期(ステージ)分類とがある。前者については、癌は転移するので発見された組織 の正常細胞とはその特性が異なる場合があるので癌細胞の組織学的分類は治療方針立案のよりどころの一つとなる。言い換えるならば、組織学的分類は原発癌に 関する分類ともいえる。 後者に関しては現在の病態を把握することが目的であり、その把握によって採りうる治療方法の選択や患者の予後についての判断基準となる。

組織学的分類
大まかに言って
* 固形癌 o 悪性腫瘍 + 癌腫 + 肉腫 o 脳腫瘍
* 造血器がん o 白血病 o リンパ腫 o 多発性骨髄腫 である。
なお、脳腫瘍については浸潤を示さない狭義の非悪性腫瘍であっても、増殖による脳組織の圧迫で致死的になる場合があるので、悪性腫瘍とは分類を分けた。
組織学的分類については組織型の項に詳しい。

病期分類
病期分類はステージとも言い表される。原発癌の種類ごとに分類基準が異なるので、ステージを異なる癌の種類の間で比較する場合は注意が必要である。普通 は、0或いはI〜IVのローマ数字で表され、数が大きいほど進行癌である。ローマ数字に英小文字を付け("IVa", "IVb"等)亜分類される。

TNM分類
国際対がん連合(UICC)による病期分類である。
分類指標として
* 原発癌の規模(T)
* 近傍リンパ節への浸潤度合い(N)
* 遠隔転移度合い(M) を用いて、各項目の度合いをT,M,Nに数字あるいは分類不能をあらわす"X"を併記する。(例;T3N0M1) (TNM分類一覧;英語)

腫瘍の治療
どの様な治療法が必要になるかは腫瘍の性質に完全に依存する。症状によっては(急性白血病などでは)呼吸管理や化学療法から始める必要があるが。それ以外 はまず通常の健康診断や血液検査で対応する。 大抵の場合は、外科的に手術で腫瘍の全摘出を試みる。手術により、実際にかなりの確率で腫瘍を除去することができる。しかし残りの場合には、しばしば手術 が不可能である。その理由は、至る所に転移していたり、腫瘍が基幹組織に浸潤していたりで、患者の生命を脅かすことなしに手術ができない場合である。また 二、三の例外もあり、卵巣がんの場合、腫瘍組織を全て摘出できなくとも、外科手術によって病状は好転する。この様な方法を(腫瘍組織の総量を減少させるの で)減量手術と呼ぶ。 臓器切除により機能・形態が損なわれ、生活の質(Quality of Life)が著しく低下する腫瘍の場合は、できるだけ臓器の温存が望まれる。頭頚部腫瘍などでは、切除により嚥下・発声・外観などが損なわれるため、早期 癌の場合、まず放射線治療での制御が選択され、放射線治療で制御困難な進行例では切除術が選択される場合が多い。 また切除術、放射線治療、化学療法単独では制御困難な進行例では、各治療法を組み合わせた集学的治療が検討される(術前照射(化学療法)、術後照射(化学 療法)、化学放射線療法(chemoradiotherapy))

詳細については各療法の項目を参照のこと。

ある種の腫瘍には免疫療法に感受性があるものも存在する。現時点では、免疫療法単独での腫瘍制御までは至っていないが、症状の緩和や集学的治 療の一環として実施され、盛んに研究がなされている。

術後検診
oncologistの仕事量の大きな部分を治療が成功した患者の術後定期検診が占める。がん治療は組み合わせ的な部分が多く、余命と生活の 質の改善は早期の再発発見に掛かっている。そして、定期健診の期間や余命はがんの性質に依存する。腫瘍学の専門領域で、"二次がん"と呼ぶ腫瘍があり、そ れはがん治療の結果により別の腫瘍が発生することである。二次がんの発生率は化学療法のスケジュールや毒性の低さにより改善される。しかし、以前がんに罹 患した患者におけるがん発生率は一般の人々に比べて、大幅に高い率を示す。 日本国においてはがん統計上、おおむね術後5年を持って治癒とみなしている。ちなみにがん治療成績で使用される5年生存率は、術後5年目の時点において、 (再発している、していないに関わらず)生存している人数の比率をさす。

終末期医療
全てのがん患者のおおよそ50%は完治すると診断されるが、多くのがん患者かこの疾病により死亡する(今日では日本国の死因の約30%が、が んである)。終末期治療が大いに尊重され、専門分野として独立してきているが、腫瘍学もまたガイダンスを提供したり、その場に際して終末期治療を施してい る。往々にして、文章では患者の手助けにならないので、むしろ患者は"生きることと近づきつつある死"につしいて体験する方が励ましになることが多い。そ の場においては、できうる限りの治療の可能性が試される。 日本国においては、またホスピスとして終末期治療を専門とする病床も増加しつつある。またかつては延命の妨げになるという理由でモルヒネによる終末期疼痛 治療は忌避されることが普通であったが、今日では終末期疼痛治療はホスピスなどにおいて実践され始めている。





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